アグリテックの意味は?

アグリテック(AgriTech)とは、農業(Agriculture)と技術(Technology)を組み合わせて作られた造語であり、ドローンやAI、IoT、ビッグデータなど、農業領域でICT技術を活用し、農業を活性化しようという取り組みです。
現代の農業は、少子高齢化や跡継ぎ不足などの影響による食料自給率の低下など、様々な課題を抱えているものの、まだまだ伸びしろがあり、ビジネスチャンスの多い分野でもあることから、多くの大企業、国内外の様々なベンチャー企業がこのアグリテックという分野に参入し、日本の農業が抱える課題を解決しようという動きが進んでいます。
なぜ今アグリテックが必要とされている?
現在、農業の様々な場面で導入が求められているアグリテック。そもそも、農業分野において、ICT技術が必要とされるには、いくつかの理由があります。
農業従事者が高齢化、減少している
現在、自営農業を主に行っている方且つ農業を主な仕事として従事している「基幹的農業従事者」は年々減少。2000年時点の約240万人から、2020年には136万人と、20年間で4割も減少してしまっています。
しかも、そのうち約7割が65歳以上の高齢者で、このままでは、現在の農業従事者の引退などに伴い、さらに減少することが予測されます。
参照:(2)農業就業者の動向:農林水産省
農林水産基本データ集:農林水産省
また、農業人口の課題に拍車をかけているのが、離農者の多さです。若い世代が「農業に携わってみたい」と農業の世界に足を踏み入れても、給与や勤務時間に対する不満が出て離農してしまっているのです。
この農業従事者の減少を補うためにも、アグリテックの活用は重要といえます。
技術やノウハウの可視化ができていない
農業従事者が持っている土作りや栽培などに関するノウハウを、これまではいわゆる口伝で、雇用者と被雇用者の間などで直接教えることで伝えられていました。
しかし、一人の農業従事者が自分自身の時間を使って教えられる内容には限界があります。これではノウハウの継承の取りこぼしが発生しかねません。
実は、この技術やノウハウの可視化や継承がうまくいっていない、という課題が前述の離農者の増加に拍車をかけているのです。せっかく農業を学ぼうとしても、実際に自分が農業を実践するために必要な情報が集まるまでに膨大な時間がかかってしまう、栽培や土作りなど技術に関するノウハウは教えてもらうことができても、経営などに関わるノウハウを教わることができず、農業経営が立ち行かなくなってしまうなどの問題が発生するためです。
扱う農産物や、その土地の気候など、様々な情報を蓄積して、技術やノウハウを可視化できるアグリテックを活用することで、これらの課題も解決できる可能性があります。
食料自給率が低下している
日本では以前から食料自給率の低さが問題となっています。
農林水産省の発表によれば、2019年度の日本の食料自給率はカロリーベースでわずか38%。これはつまり、日本人が摂取している食料の約6割以上を海外からの輸入に頼っているということです。
政府は2030年までに食料自給率を45%まで引き上げるという目標を掲げています。
日本の食料自給率:農林水産省
農業従事者が減少する中でこの目標を達成するには、データなどを活用して不作を最小限にとどめる、ドローンやロボットの活用で大量生産を可能にするなど、より効率的な農業を行うことがとても重要です。
アグリテックで特に注目されている分野とは?
それでは、実際にアグリテックで注目されている分野とはどんなものなのでしょうか? 意外に知られていない、その活用事例をご紹介します。
ドローン
アグリテックの代表的な実用例が農業用ドローンです。
多くの人がイメージしやすいのは農薬の散布ですが、現在は大規模な圃場での肥料散布や種まきなどにも広く活用されています。
これまでは、肥料散布や農薬散布の作業を農業用の無人ヘリコプターで行うのが一般的でしたが、高価で重量もあるため誰もが使用できるものではありませんでした。
対して農業用ドローンは10〜20kgほどの重量で、価格も1台100万円前後。操作もシンプルで高齢者にも扱いやすいため、労働負担の軽減につながっています。
loTとAI
走行時に土壌の状態を分析したり、収穫時に望ましい土壌の状態を判断したりできるトラクターや、農場の気温や湿度、雨量データを10分間隔で計測できるネットワーク機器など、農業用loTが普及しています。
農業用の機器にセンサーやモニターを取り付けることで、簡単にビッグデータの収集をすることが可能になるのです。
loT機器や農業用ドローンに取り付けられたカメラから収集したデータをAIが分析することで、適正な収穫時期、収穫量の予測を立てることにも役立てられています。
ロボット
農作業は種まきや植え付け、収穫だけでなく、除草や搬送など多岐に渡ります。それらの作業すべてが人の手でないと行えないかといえば、そうではありません。むしろ農業はロボットで補える作業も多く存在します。単純作業にロボットを用いることで、大規模生産や最適化が可能になり、作業の効率化や人員の最適な配置につながります。
アグリテックはどのように導入されている?
アグリテックはすでに国内外で数多く導入されています。実際に多くの農場で導入されているアグリテックとはどのようなものがあるのでしょうか。
みどりモニタ(日本)
国内ですでに多くの生産者が導入しているアグリテックが「みどりモニタ」。
自動的に農場の環境を計測、記録し、そのデータを離れた所からいつでも確認することができるモニタリングシステムです。ビニールハウス内に専用のセンサーを設置することで、農産物を育てている環境や状況を自動的に計ってくれます。
難しい設定が必要なく、計測データが見やすいシンプルなデザインのため、誰にでも使いやすいのが特徴です。
また、過去のデータをクラウドに蓄積して栽培に役立てることができるほか、施設内の環境異常を察知して警告してくれることも可能なため、損失を最小限に抑えることができます。
さらには、従来紙で行ってきた管理や、口伝では難しかったデータの共有にも優れており、生産者同士での比較や勉強会など、これまでにできなかった取り組みも可能にしてくれます。
低価格でコストパフォーマンスが良い点も、生産者に支持されているポイントです。
参考:みどりモニタ
Vegebot(イギリス)
傷つきやすく繊細で、なおかつ収穫タイミングが特に難しいとされる作物の一つにレタスがあります。レタスはその最適なタイミングを見計らうために手作業で収穫を行うことが一般的ですが、これまで人員を割いてきた収穫作業にもアグリテックが活用され始めています。
「Vegebot」は、イギリスのケンブリッジ大学が開発したレタスの収穫ロボットです。まずロボットの内蔵カメラがレタスを検知し、その色から収穫すべきかどうかというタイミングを判断します。そして実際の収穫作業では、レタスを傷つけずに切り取り、所定の位置に移動させることが可能です。
独自に開発された機械学習アルゴリズムによって、レタスの画像データから収穫のベストタイミングを高い精度で判断させることに成功しています。
ロボットトラクター(日本)
農業に関わる会社、というと真っ先に「ヤンマー」という企業名が出てくる人も多いのではないでしょうか。実はそのヤンマーも北海道大学と共同研究を行い、2018年には実用化を実現しました。
タブレットなどで遠隔操作を行うことができる「ロボットトラクター」を開発、実用化することで農業の半自動化、ロボット化に成功しています。
参考:ロボットトラクター|ヤンマー
アグリテックがもたらす効果、メリット

蓄積してきたノウハウを継承しやすくする
これまで、生産者に蓄えられた農業に関するノウハウは主に、雇用者と被雇用者間、地域内といった小さなコミュニティでしか共有されておらず、その管理も行き届いていないというケースも多く、それがノウハウの継承の“取りこぼし”につながっていました。
しかし、アグリテックのデータ共有の利便性を活用することで、熟練者のノウハウ継承が容易になると同時に、どのようなデータが誰に共有されているのかといった管理面でも大きな効果が期待できます。
データがしっかりと蓄積、整理され、それを簡単に取り出せることができれば未経験者にとっても農業が身近なものになり、経験の差を縮めることも可能になります。これが結果として、技術を持った農業者が育ちにくい環境を改善するだけでなく、離農者を減少させる効果も期待できます。
農作業時間の軽減、生産量の増加
アグリテックが普及することで、これまで一つ一つ手作業で行っていたことを農業用ロボットに任せることができます。loTやドローン技術、ロボットの活用により、短時間で広範囲に対して作業することができるようになるのです。これにより人の農作業時間や労力が削減され、生産性が大幅に向上します。
そして、その削減された時間を農産物の育成状況、品質の分析など、より本質的なことに当てることができ、結果品質の向上や生産量の増加につなげることができるのではないでしょうか。
新しい働き方が実現できる
アグリテックが進むことで、現在日本のさまざまな業界で話題になっている働き方改革が、農業の分野においても実現できます。これまで、重労働かつ長時間労働、休みがないなどのイメージが強かった農業でも、データやロボットを活用することで、働き方やすい環境が整備されていくと考えられます。
農業に興味はあるけれど、どうしても労働環境がネックになってしまうと考えている人材を取り込むための足掛かりとしても、アグリテックの活用は見逃せないものです。アグリテックの発展により、「農業=肉体労働」というイメージから、よりテクニカルなイメージに変化していくでしょう。
アグリテックを学びたいと思ったら、名古屋医健スポーツ専門学校へ
現在、農業が抱える課題を解決するためにも、そして日本の農業を活性化させるためにも、アグリテックの活用は必要不可欠です。
アグリテックはまだまだ伸び代の大きい分野。
少しでも興味が出たら、オープンキャンパスに行き実際に体験することをおすすめしています。皆さんが持っている農業のイメージが変わり、夢や目標を見つけるきっかけになるかもしれません。資料請求をすれば最新のイベント情報を知ることができるため、是非するとよいでしょう。
農業は私たちが生活をするには切っても切り離せない存在であり、時代に合わせ変化を続けています。これを機に、名古屋医健スポーツ専門学校でAIやIoTなど、農業分野で活用できるICT技術を学んで日本の農業を支えてみませんか。